TRI System

金属と樹脂の接合技術。従来の接着剤による接合とは比べものにならない接合力、封止性を発揮します。

技術の概要

通常のインサート成形では、金属と樹脂との接合面に接合機構がない事から、接着剤を使用したり、機械加工で樹脂の引っ掛かり部分が必要でした。また接合面にすき間が出来たり機械的強度が無いという弱点があります。
TRI System®では、金属表面に接合機構(化学的な結合)を発現させ強固で均一な接着を実現します。このため、接合面の複雑な加工が必要なく形状の制約を受けずに自由に設計する事ができます。また、優れた封止性や耐圧防水性、耐油性、耐熱性を発揮します。

名前の由来

The Technologies Rise from Iwate

TRI System®は、株式会社東亜電化の登録商標です。


TRI System® の工法


TRI Systemの工法

TRI System® の特徴

  1. 強固な接合強度
    金属への表面処理で形成される接合膜により、金属と樹脂が強固に接合、接着剤の分子間力結合とは比べものにならない接合強度を誇ります。
  2. 高封止性
    金属と樹脂が均一に接合しているので、高気密状態を作る事が出来ます。
  3. 複雑形状不要
    単純形状でも接合できるため、形状の制約を受けずに設計が可能です。

接合可能な金属と樹脂

  • 金属
    銅系、アルミニウム、その他
  • 樹脂
    PPS、PBT、その他

適用例


TRI Systemはホンダ燃料電池自動車ウルトラキャパシタ用部品に採用/車載用リチウムイオン2次電池の封口板の封止部へ適用可能





一体接合の工法

TRI System®は、新しい考え方による金属と樹脂の一体接合技術です。本技術の特徴は、金属への接合膜形成技術とインサート成形技術を用いて、接着剤を使わずに金属と樹脂を一体接合させるところにあります。


一体接合方法の一例モデル図

TRI System®による一体接合方法の一例をモデル化すると、図のようになります。

TRI接着複合体断面の電子顕微鏡(SEM)像

TRI接着複合体断面の電子顕微鏡(SEM)像 × 10,000倍 <協力:岩手県工業技術センター>

  1. 金属表面に金属・樹脂の両方と化学反応性が高いナノスケールの接合膜をTRI処理によって形成します。
  2. 接合膜を形成された金属をプラスチック成形金型内に入れ込み樹脂成形を行います(インサート 成形)。この時、成形金型内に流れ込む溶融樹脂にかかる高温、高圧の作用により、金属表面の接合膜と樹脂が反応し、強固な接合力を有する一体接合品ができあがります。
  3. 上記の工法で作られた一体接合品は、接合界面に下図のような化学的接合層を作る為に熱収縮による隙間が出来ず、面接着が可能で、高い封止性や耐圧防水性が期待出来ます。本技術を応用する事によって、既存のインサート成形品では不可能であった新規な製品設計ができます。

強固な接合強度(試験方法)

1. テストピースの形状

下記の形状のテストピースを使用します。


せん断試験片

せん断試験片


突合せ試験片

突合せ試験片


2. 接合強度測定方法


接合強度測定

接合強度測定

接合膜を形成した金属をインサート射出成形により樹脂を接合した後、精密荷重測定器を用いて接合強度を測定します。
精密荷重測定器: MODEL-1840M(アイコーエンジニアリング株式会社製)
引張り速度:5mm/min



3. 評価内容


  1. 初期接合強度の測定
  2. 恒温恒湿試験後の接合強度の測定
    試験サンプルを恒温恒湿槽(80℃、95%)の中へ200時間投入し、24時間自然乾燥のあと接合強度の評価をします。その他の条件はJIS規格-K-6857に従っております。

恒温恒湿試験後の接合強度の測定

恒温恒湿試験後の接合強度の測定

  1. 温度変化試験後の接合強度の測定
    試験サンプルを高温(80℃、30分)と低温(-40℃、30分)を150サイクル繰り返し,(移し変え時間5分以内)24時間自然乾燥のあと接合強度の評価をします。その他の条件はJIS規格-C-0025に従っております。

温度変化試験後の接合強度の測定

温度変化試験後の接合強度の測定


せん断試験片による評価

評価基準


せん断試験片による評価基準

せん断試験片による評価基準


せん断試験片による評価結果

金属 樹脂 PPS PBT PA6
メーカー TS社 TR社 P社 TR社 U社 U社
フィラー 有り 有り 有り 有り 無し 有り
アルミ
(A1050)
初期接合 樹脂破断
(14Mpa)
接合部で剥離
(13MPa)
樹脂破断
(12Mpa)
樹脂破断
(13Mpa)
樹脂破断
(16Mpa)
※金属破断
(16Mpa)
恒温恒湿
試験後
樹脂破断
(13Mpa)
樹脂破断
(11Mpa)
樹脂破断
(9Mpa)
樹脂破断
(12Mpa)
接合部で剥離
(6MPa)
接合部で剥離
(11MPa)
温度変化
試験後
樹脂破断
(13Mpa)
樹脂破断
(13Mpa)
樹脂破断
(11Mpa)
樹脂破断
(13Mpa)
接合部で剥離
(15MPa)
※金属破断
(15Mpa)

(C1100)
初期接合 樹脂破断
(14Mpa)
樹脂破断
(12Mpa)
樹脂破断
(12Mpa)
樹脂破断
(14Mpa)
樹脂破断
(16Mpa)
接合部で剥離
(15MPa)
恒温恒湿
試験後
樹脂破断
(12Mpa)
樹脂破断
(11Mpa)
樹脂破断
(9Mpa)
樹脂破断
(12Mpa)
接合部で剥離
(7MPa)
接合部で剥離
(9MPa)
温度変化
試験後
樹脂破断
(13Mpa)
樹脂破断
(12Mpa)
樹脂破断
(10Mpa)
樹脂破断
(14Mpa)
接合部で剥離
(13MPa)
接合部で剥離
(13MPa)

※ ナイロンの場合、金属の強度より樹脂強度が上回る為、強固に接合されている場合には金属破断となります。

せん断試験片による試験では、接合部の面積が大きいために接合強度の値が樹脂強度を上回り、その結果、ほとんどの場合樹脂破断が起こり、真の接合強度の値が得られませんでした。



突合せ試験片による評価

評価基準


突合せ試験片による評価基準

突合せ試験片による評価基準


突合せ試験片による評価結果

金属 樹脂 PPS PBT PA6
メーカー TS社 TR社 P社 TR社 U社 U社
フィラー 有り 有り 有り 有り 無し 有り
アルミ
(A1050)
初期接合 樹脂残り良好
(43Mpa)
樹脂残り良好
(41Mpa)
樹脂残り良好
(29Mpa)
樹脂残り良好
(41Mpa)
樹脂残り良好
(40Mpa)
樹脂残り良好
(48Mpa)
恒温恒湿
試験後
樹脂残り良好
(40Mpa)
樹脂残り良好
(40Mpa)
樹脂残り良好
(28Mpa)
樹脂残り良好
(32Mpa)
樹脂残り無し
(5Mpa)
樹脂残り無し
(11Mpa)
温度変化
試験後
樹脂残り良好
(44Mpa)
樹脂残り良好
(40Mpa)
樹脂残り良好
(30Mpa)
樹脂残り良好
(40Mpa)
樹脂残り良好
(24Mpa)
樹脂残り良好
(51Mpa)

(C1100)
初期接合 樹脂残り良好
(30Mpa)
樹脂残り良好
(29Mpa)
樹脂残り良好
(24Mpa)
樹脂残り良好
(24Mpa)
樹脂残り良好
(23Mpa)
樹脂残り小
(15Mpa)
恒温恒湿
試験後
樹脂残り良好
(30Mpa)
樹脂残り良好
(34Mpa)
樹脂残り良好
(23Mpa)
樹脂残り小
(12Mpa)
樹脂残り無し
(10Mpa)
樹脂残り無し
(2Mpa)
温度変化
試験後
樹脂残り良好
(36Mpa)
樹脂残り良好
(32Mpa)
樹脂残り良好
(17Mpa)
樹脂残り小
(21Mpa)
樹脂残り良好
(21Mpa)
樹脂残り無し
(11Mpa)

突合せ試験片による試験では、金属と樹脂の接合部に対して直角に引っ張り力が加わるために、せん断試験片による測定より正しい接合強度が得られると考えられます。

突合せ試験片による試験結果、PPS、PBTは、「恒温恒湿試験」・「温度変化試験」による劣化がほとんど見られません。PA6は、「恒温恒湿試験」後の接合強度が低下しましたが、これは樹脂が吸湿性であるために樹脂劣化が起こったことが原因です。
自動車メーカーで各種試験を行っていただいた結果、「車載用リチウムイオン電池封口板に本技術が適用可能である」という評価を受けました。



高封止性(高気密性)

試験内容

1. テストピースの形状

下記(左)の形状の金属を使用して、下記(右)形状のテストピースを作製し使用します。


テストピースの形状

テストピースの形状


2. 封止評価方法

テストピースは金属片にリン青銅、黄銅、アルミニウムを使用し、樹脂はPA6を用います。

封止測定ガスはArガスを用いて、漏れは封止実験用装置に水を張り目視によって確認します。

評価条件は次のとおりです。

 

  • 加圧ガス:Arガス
  • 試験温度:25℃
  • 加圧圧力:1kgf/cm2
  • 加圧試験時間:24時間

封止評価方法

封止評価方法の図

Arガスによる封止評価結果


加圧ガス封止評価結果(1kgf/cm2、24時間) 
リン青銅 黄銅 アルミニウム
未処理 直ちに漏れ 直ちに漏れ 直ちに漏れ
一体接合品 漏れ無し 漏れ無し 漏れ無し

大型コンデンサ封口板での評価


大型コンデンサ封口板

大型コンデンサ封口板

端子:アルミニウム、樹脂:PPS 

 

  • 耐電解液性(充放電時):液漏れ無し
  • 耐熱試験(200℃×72時間):液漏れ無し
  • ヒートサイクル試験(-40⇔140℃)×500サイクル:液漏れ無し
  • 封止性(電解液 3kgf/cm2):液漏れ無し

接合可能な金属と樹脂

せん断試験片による試験結果


PPS PBT PA6 ABS PE PP
銅系
アルミニウム

◎ 樹脂破断
◯ 樹脂破断しないが、接合強度は高い
△ 接合強度が低い
✗ 接合しない
☆ 確認していない組み合わせ


樹脂のメーカー、グレード、配合物により接合力が変化します。上記の金属、樹脂以外にも接合の可能性がありますのでご相談ください。